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アイテム詳細

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)
新田 次郎/ 新潮社

グループ:Book /ランキング:2547
価格:¥ 540
発売日:1978-01 /通常24時間以内に発送

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カスタマーレビュー
おすすめ度:
新田が描いた「日露戦争」  (2008-07-03)
新田は司馬遼太郎と並んで、戦後の夏目漱石・森鴎外のような存在に例えられることがある。
それは2者が戦後の文壇を牽引する立場にあっただけでなく、文学を通して「日本とは何か」という日本の近代アイデンティティに一つの解答を示し得ていたからではないか。
明治期、漱石や鴎外は欧米文明をどのようにアレンジ吸収しつつ、日本独自のアイデンティティを残すかという問題に取り組み、これが文学作品群として残されていった。
司馬は、敗戦というアイデンティティ危機に直面した戦後日本にあって、独自の司馬史観を展開。やがて『街道を行く』シリーズでさらに日本という国のかたちを追い求めていった。
一方新田は、『富士山頂』など戦前戦後の科学技術発展、そして山岳信仰などに目を向け、日本の精神伝統を追い求めていった。
司馬の考えを最も示す代表作は日露戦争を描いた『坂の上の雲』であるが、これに対比するものとして位置づけられる新田作品を探すと、本書『八甲田山』が最も適しているといえる。
司馬は『坂の上〜』で、まさに坂の上の雲を追いかけるように希望に満ちた近代日本人の姿を描き、現代の日本人を勇気づけている。
新田は、八甲田山の遭難事件を日露戦争の前哨として描き、司馬史観にはない、暗い側面に焦点を当てている。

本書は組織論としても見るべきものがある。保守的発想、プライド、リーダーの判断力欠如、そして集団心理などが結果的に恐ろしい悲劇を生む。
本書を敷延させていくと、こうした組織上の欠陥が、やがて日本の敗戦につながったということであろうか。
新田自身の国家観は、『国家の品格』に示されているとおり、かなり保守よりであり、司馬史観とも似通っている。
ただし戦争に対する捉え方は、司馬史観と違うものが感じられる。

個人的には正直、本書のような暗さは好きにはなれない。司馬のように、読後感として勇気を与えられるものではない。
しかし、反省と智恵を与えられる。そのような一冊である。

文章がすごい  (2008-04-19)
隊を率いる者の判断が、人命を左右する
ということが描かれています。

この本のなかではまた、気象の変化が描かれていますが
表現が的確で目に見えるようです。
寒さが隊員を襲う様子もリアルで
こちらにまで痛みが伝わってきます。

気象に造詣が深い著者ならではだと思います。

凄まじさ  (2008-02-29)
極寒の状態での人間の生態、軍隊という構図、総合的に立派なホラーストーリーとなりえる歴史が日本にあったという事実を知り得た。エピローグがもの悲しい。

ビジネススクールの定番☆  (2007-10-23)
物語は日露戦争直前における2人の指揮官のあり方。ほぼノンフィクションです。

1人はエリート出身、1人は現場の叩き上げ。そして終末はどちらかがほぼ全滅してしまう。

物語としても非常に面白いが、経営戦略としても非常に興味深い。

極限状態にある組織と人間  (2007-03-31)
長年にわたる気象庁勤務と、登山家としての経験を持つ著者の新田次郎氏。
「強力伝」「富士山頂」など、山と人間の極限のせめぎあいを数多く描いてきたその筆力は、
この作品でもいかんなく発揮されている。

明治35年、目前に迫った日露戦争。ロシアの陸奥湾封鎖の想定のもと、八甲田山雪中行軍は行われた。
咆哮する風の音、重く沈む灰色の空と雪煙、骨まで凍らすような寒気。
小説を読み進めるうちに、第三十一聯隊および五聯隊の隊士たちとともに、
読者も白魔の世界に引きずり込まれるかのような迫力がある。
雪中の死の彷徨、あるものは発狂し、あるものは眠るように倒れ、追い詰められてゆく第五聯隊の極限の状況が、
背筋にジンと来るような緊張感を持って迫ってくる。

事実を元にした作品であるから、全体に記録文学的な筆致で構成されているが、完全な実録ではないことは知っておきたい。
士官の名は実名を窺わせながらも変更されているし、所々潤色も見られる。
実名と仮名が併記される場面などでは、やや読者を混乱させる面もある。

しかし新田氏の本作における目的は、事件を完全なドキュメンタリーに再現することではなかったはずだ。
本作で新田氏は、極限状態の中にある「組織」というものに注目している。
すなわち三十一聯隊と五聯隊の明暗や、死後も失われなかった序列である。
階級の差はそのまま死傷率の差、または祭祀料の差という、冷徹なまでの数字になって表れていた。
国家とは、組織とは、軍とは、戦争とは、人間とは、命とは何か。
この八甲田山死の彷徨を通じて、新田氏は読者に問いかけている。


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