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居酒屋で酒盛りなどしようという時、席に着くなり「おっ、メニューがバー
ジョンアップしたね」などと言いながらオシボリで首のまわりを拭いている
のは、この道10年のプログラマである。追い撃ちをかけるように誰かが「石
角君、ちょっと席をスワップしてくれたまへ」などという。ほかの連中も「こ
の醤油差しはユーザーインターフェイスがよくないな」とか「焼き鳥とジャ
ガバタをマルチタスクで食べてるね」などわけの分からないことを言ってい
る。こいつら一体なんなんだ? 店の女の子のけむたそうな視線を浴びる。 エレベータに乗れば「これは、ファースト・イン・ラスト・アウトという 奴ですな」というのは、比較的高級なプログラマである。店の前でゲロする と「こらっ、こんなところでコアダンプするな」とくるのもプログラマであ る。「答えは1ビット、イエスかノーかだ」なんていうのは、ちょっと夢見 がちなプログラマかもしれない。 実は、プログラマは言葉の世界に生きている。ほかでもないコンピュータ こそ、プログラム言語というあやしい言語で息を吹き込まれるユダヤ・カバ ラの権化のような存在なのだ。プログラム以外のさまざまな段階でもプログ ラマのまわりには言葉があふれている。 そして、プログラミングの世界は およそ本物の世界の写像のようなものである。そんなわけで、使われるテク ニカルタームも、バリエーションに富んだ活動範囲も広いものとなる。 「 この葉書には1ヵ所バグがある。さて、どこでしょう?」とか「おまえはや っぱり山田コンパチなんだ」とか「キミの話はさっきから無限ループしてい るよ」などは、ごく当たり前のように使われている。あるいはまた、「キミ の頭は揮発性メモリだね」とか「いまのでヒットポイントが上がった」(こ れはゲーマーですか)とか「いまの話はデリート・アスター・ポツ・アスタ ーして欲しい」(DEL *.*)などという言い回しをする人もよくいる。 とくに、「バグ」と「コンパチブル」と「バージョン」と「デフォルト」 は、きわめて頻繁に使われている。 この業界にいると、これらの言葉が、 近所のオバサンやジイサンにも通じるごくあたり前の日本語だと錯覚するほ どである。(この3つについては、「広辞苑」の第四版には入ったからその 日も遠くはないかもしれないが)
ちなみに、プログラマの最大の悪態は「人間のバグや」というものだとい
う。いうまでもなく、「人間のクズや」が訛ってこうなったものだろう。ど
んなにバグを出すプログラマがいても、滅多に言ってはいけません。 |
| 2版 | 2006年10月8日 | 「デフォルト」 を追加 |
| 初版 | 2000年3月4日 | 新規作成 |